樹木葬の現在の状況

近年、日本のお墓選びの現状に大きな変化が起きています。伝統的な墓石を据える「一般墓」に代わり、「樹木葬(じゅもくそう)」という自然に近い埋葬スタイルが広く注目され、実際の購入者の約 半数近くが樹木葬を選んでいる という調査結果が出ています。これまでの供養・墓の考え方が多様化しつつある今、その「現状」の姿を読み解きます。

増える樹木葬の選択率と背景

最新の「お墓の消費者全国実態調査(2025年)」によれば、お墓の購入者のうち48.5%前後が樹木葬を選んでいるという結果が報告されています。これは「一般墓(17%)」「納骨堂(約16%)」「合祀墓・合葬墓(約15%)」と比較しても突出した割合です。樹木葬の比率は直近の調査でも継続して高く、日本におけるお墓の主流のひとつになりつつあります。

この傾向の背景には、ライフスタイルや家族構成の変化があります。核家族化や単身世帯の増加、継承者(跡継ぎ)がいないという課題から、後継者が不要な永代供養型の選択肢として樹木葬への注目が高まっているのです。

また、樹木葬を選ぶ主な理由としては、「費用を抑えられる」「管理が容易」「故人の自然志向への配慮」などが挙げられています。こうした価値観は従来のお墓よりも「自由で個人の意思を尊重した埋葬方法」として受け入れられる要因になっています。

お墓選びの価値観と今後の見通し

調査では、樹木葬を選ぶ人の多くに 「継承の課題」 が挙がっており、約75%がこの点を理由に選択しているという結果もあります。これは、家族の有無や親族関係に左右されない供養スタイルとして樹木葬が機能していることを示しています。

さらに、樹木葬は宗教・宗派を問わず利用できるケースも多く、菩提寺に属さない人や今の時代の価値観に合った供養を希望する人にとって選びやすいスタイルになっています。加えて、ペットと一緒に眠れるタイプなど、多様なニーズに対応する樹木葬プランも登場しており、今後も選択の幅が広がると見られています。

一方で、樹木葬の供給自体が増えてきたため、管理体制や契約内容の確認を慎重に行う必要があるという指摘も出ています。現状の人気だけでなく、長い目で見た供養生活の質を見極めることが重要です。

まとめ

まとめると、日本のお墓事情は「多様化」が進んでおり、樹木葬はすでに大きな位置を占めています。一般墓の割合が減少する一方、跡継ぎ不要で費用や管理面の負担が比較的軽い樹木葬が選ばれる傾向はここ数年で定着しつつあります。価値観の変化を背景に、今後も個人の意思やライフスタイルに合った供養スタイルとして、樹木葬への関心や利用は高まっていくと考えられます。